足場なしで高さ120mまで高圧洗浄。ハンガリーABZの洗浄ドローン「C30」の使い方とメリット、必要な機材
工場のタンクやサイロ、橋の鉄骨、建物の外壁。高い場所の汚れやさびを落とす作業は、これまで足場を組んだり、クレーンを手配したり、ロープで作業員が降りたりして行うのが一般的でした。準備に時間と費用がかかり、作業員の安全確保も欠かせません。
こうした「高所の洗浄」をドローンで行う動きが、海外で本格化しています。ハンガリーの産業用ドローンメーカーABZ Innovation(エービーゼット・イノベーション)は2026年10月23日、高圧洗浄ドローン「C30」を発表しました。どんな使い方をするのか、業務上のメリット、そして導入にはどれくらいの機材・スペックが必要なのかを、メーカー公式の情報をもとに整理します。
目次
C30とは? 地上の高圧洗浄機と組み合わせる「飛ぶ洗浄機」
C30は、高い場所の壁や構造物に高圧の水を吹きつけて洗うためのドローンです。最大の特徴は、機体に水のタンクを積まないことです。水は地上に置いた専用の高圧洗浄機から、軽くて柔らかいホースで機体へ送られます。機体は細長いノズル(ランス)を構え、表面に向けて水を噴射します(ABZ Innovation公式発表(2026年10月23日))。
公式発表による主な仕様は次のとおりです。
- 洗浄圧力:最大500bar(圧力は地上の高圧洗浄機がつくる)
- 水量:毎分15リットル(コンパクト構成)または毎分30リットル(最大構成)
- 洗浄できる高さ:最大120m
- 温水:標準で70〜80℃(長時間運用の推奨上限は80℃)
- 洗浄面積の目安:外壁やサイロで毎分4〜10m²(表面の状態や天候による)
- 距離の保ち方:レーダーで壁との距離を自動で一定に保つ
- 機体:水しぶき・湿気・洗剤・消毒剤に耐える密閉構造、寸法310×260×81cm
同社は高さ60mまでの小型機「C10」も販売しており、ガラスや外壁など日常的な清掃はC10、重い汚れやさび・塗膜の除去はC30という役割分担です。
どんな使い方をするのか
メーカーは、C30の用途を地上の洗浄機の構成ごとに次のように案内しています(ABZ Innovation C30製品ページ)。
- 鉄骨や橋:さび・塗装・腐食の除去など、塗り替え前の下地づくり
- タンク・配管・サイロ・物流倉庫:タンクの外側にこびりついた汚れや、大きな建物の外壁の洗浄
- 風車のブレード:振動や摩耗の原因になる、ムラのある付着物の除去
- 重機やコンクリート型枠:掘削機やクレーンなどの大型機械、型枠の洗浄
- 油汚れ:温水を使った油・グリースの洗浄
- 太陽光発電所:圧力を下げ、水量を保ったままパネルをやさしくすすぐ
発表の前には、ハンガリー・ヴィショントの稼働中の工場で試験を行い、約30年分の汚れが付いた約600m²の外壁を、洗剤を使わず水だけで1日かからずに洗い終えたとしています。

業務でのメリット
足場・クレーン・ロープ作業を減らせる
いちばんのメリットは、高所作業の段取りそのものを減らせることです。足場の組み立てや解体、クレーンの手配が不要になれば、作業の準備期間が短くなり、工場や施設を止める時間も短くできる可能性があります。作業員は地上にいるので、高い場所で高圧の水を扱うリスクも下がります。
「圧力」と「水量」の両方で洗う
メーカーは、高い圧力でこびりついた汚れやさびを浮かせ、毎分30リットルの水量で一気に流すことが洗浄スピードを左右すると説明しています。多くの作業では洗剤が不要で、油汚れには70〜80℃の温水を使うとしており、薬剤を含んだ排水を減らせる点も利点です。
仕上がりのムラを減らせる
レーダーで壁との距離を一定に保つため、操縦者が手で距離を調整し続ける必要がなく、広い外壁でも同じ条件で洗い続けやすくなります。
導入に必要な機材とスペックの目安
C30は「ドローンだけ買えば使える」製品ではなく、地上の高圧洗浄機とセットで使うシステムです。メーカーのカタログでは、組み合わせる地上ユニットとして次のような機種が案内されています(ABZ Innovation C30カタログ(PDF))。
- 最大性能向け(電動):最大500bar・毎分30リットル。400V・63Aの電源が必要で、本体重量は510kg
- 中規模向け(電動):最大500bar・最大で毎分15〜18リットル。400V電源、本体重量200〜290kg
- 電源のない現場向け(ガソリン):最大500bar・最大で毎分18リットル、本体重量250kg
- 電源のない現場向け(ディーゼル):500bar・毎分30リットル、本体重量1,630kgの上位機
このほか、洗浄機のポンプやノズルを守るための給水フィルター、汚れの種類に合わせて選ぶノズル(遠くまで届く直進タイプ、広く当てる扇形タイプ、塗膜はがしに向く回転タイプなど)も必要になります。つまり導入を考えるときは、機体に加えて「現場で使える電源または燃料」「十分な量の給水」「数百kg級の洗浄機を運ぶ手段」をそろえられるかが、最初のチェックポイントになります。
なお機体の重さは、公式発表では43kg(バッテリー込み)、製品ページでは36kgと記載が分かれていました。いずれにしても数十kg級の大型機で、運用には相応の体制が必要です。
価格・飛行時間・日本での提供状況
C30は発表日から、40か国以上の販売・サービス網を通じて注文できるとされています。一方で、価格と1回あたりの飛行時間は公式情報では確認できませんでした。また、公式の販売店一覧には日本の販売店は掲載されておらず、日本での販売・サポート体制も確認できませんでした。地上の洗浄機は欧州向けの電源仕様(400V・50Hz)で案内されているため、日本の現場で使えるかどうかもあわせて、メーカーへ直接確認する必要があります。
「見る」点検から、現場で「作業する」ドローンへ。ビルメンテナンスやプラント保守、塗装工事など、高所作業を抱える業種にとって注目したい動きです。
※業務での飛行には、機体の重さや場所・方法に応じて許可・承認などが必要な場合があります。基礎から学びたい方はIDAの講習をご活用ください。
出典
- ABZ Innovation:ABZ Innovation Launches the C30: Up to 500 bar Pressure, Up to 120 Meters Reach(2026年10月23日)
- ABZ Innovation:C30 製品ページ
- ABZ Innovation:C30 High-Pressure Solutions カタログ(PDF)
- ABZ Innovation:Where to buy(販売店一覧)
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