橋脚や岩盤を自動で撮り分け。点検ドローン「Elios 3」の新機能AutoScanで変わる3D点検
橋脚や擁壁、鉱山の岩盤、倉庫の高い棚など、人が近づきにくい「大きくて平らな面」の点検。ドローンで撮るにしても、何百枚もの写真をすき間なく同じ細かさで撮り続けるのは、手動操縦では簡単ではありません。
スイスのFlyability(フライアビリティ)は、屋内・閉所向けの点検ドローン「Elios 3」に、この撮影を自動化する新機能「AutoScan」を加えました。使える現場、業務上のメリット、導入前に確認したい条件を整理します。
目次
AutoScanとは? 面を格子状に自動で撮り分ける機能
Elios 3は機体を保護ケージで覆った点検用ドローンで、LiDAR(レーザーで周囲の形をはかるセンサー)を使い、GPSが届かない屋内でも位置を把握して飛べます(Flyability公式 Elios 3)。
AutoScanでは、撮りたい面の角を3か所指定し、目標の解像度と写真の重なりを設定すると、機体が撮影位置を格子状に計画して自動で撮影します。モードは3Dモデル用の写真を集める「3D Photogrammetry」と、決めた間隔で順に撮る「Grid Inspection」の2つです(Flyability ナレッジベース:Elios 3 – Autoscan)。前提となるソフト「2026.03」は、更新履歴で2026年10月リリースとされています(Previous System Updates)。
使える現場:インフラ・鉱山・倉庫・3D測量サービス
公式ブログでは主に次の用途が挙げられています(Flyability公式ブログ:Autonomous Scanning Image Acquisition with Elios 3)。
- インフラ点検:外壁・橋脚・擁壁などコンクリート面の損傷記録や状態評価、寸法計測
- 鉱山:坑道の壁や岩盤の記録。人が安全に近づけない場所のデータ取得
- 工場・倉庫:保管ラックや高い棚の点検。くり返し撮影して変化を記録
- 測量・ドローンサービス事業者:顧客へ3Dモデルや点検データを納品
同ブログでは、米国の地下鉱山で、作業員が安全な場所にとどまったまま立ち入れない空間を撮影し、地質チームが3Dモデルで構造を確認した試験も紹介されています。
業務でのメリット
撮り漏れと「むら」を減らせる
写真測量では、写真の重なりと細かさがそろっていることが重要です。設定にもとづいて飛び方が自動で決まるため、操縦者の負担を減らし、データのすき間を抑えやすくなります。
損傷を立体で共有できる
1枚の写真に収まらないひび割れも、3Dモデルなら形や広がり、位置をつかめます。発注者や社内と同じモデルを見ながら話せ、気になる場所から元の写真に戻って確認することもできます。
操縦者が主導権を持ったまま
飛行中もいつでも一時停止・中止・手動操縦への切り替えができ、障害物回避も有効なままです(前出ナレッジベース)。

導入前に確認したい機材・条件
- Premium Software Subscriptionの契約
- 操縦アプリCockpitと機体ファームウェアが2026.03以降
- LiDARペイロードの搭載
- 写真と位置・向きのデータ(CSV)を書き出すInspector
- 写真測量ソフト:AutoScanは撮影の自動化で、3Dモデルは自動ではつくりません。PIX4D、Bentley、Metashapeなどで処理します
- カメラの記録解像度はFHD(4Kのままではスキャンを開始できません)
電源と飛行時間
Flyabilityは、地上から給電し続ける「Tether Power Unit」(ケーブル長50m)との併用を推奨しています(Flyability公式 Tether Power Unit)。通常のバッテリーでも使えますが、交換後は同じスキャンを再開できず、残りの範囲を新しく設定し直す必要があります。国内総代理店のブルーイノベーションはElios 3の飛行時間を「最大12分」と案内しています(ブルーイノベーション ELIOS 3専用ページ)。
向かない対象
AutoScanは面から一定の距離で平らに飛ぶため、タンクやサイロなどの曲面では解像度や重なりがそろいません。公式は、ほぼ平らとみなせる小さなブロックに分けて撮る方法をすすめています。特徴の少ない長い通路では、位置推定がずれることがあるとしています。
価格・日本での提供状況
日本ではブルーイノベーションがElios 3を扱い、機体購入のほか運用委託やサブスクリプションも案内しています。ただし、AutoScanの国内提供時期とPremium Software Subscriptionの価格は、公開情報では確認できませんでした。検討の際は販売店へ直接ご確認ください。
点検ドローンの競争は、機体性能だけでなく「データをどうそろえ、どう活かすか」へ広がっています。AutoScanはその流れがよくわかる機能です。
※業務での飛行には、場所や方法に応じて許可・承認などが必要な場合があります。基礎から学びたい方はIDAの講習をご活用ください。
IDAで、業務につながるドローンの知識と技術を
国際ドローン協会(IDA)では、IDA無人航空機教習所(国土交通省 登録講習機関)をはじめ、点検や測量など仕事での活用を見すえた講習を行っています。
IDAメールマガジンにご登録いただくと、電子書籍「ドローン大百科」をプレゼントしています。
この記事へのコメントはありません。